出産後の入院中は暇だった。
面会時間には退屈しなかったが
面会時間が終わり皆が帰ってしまうとやることがなかった。
同室のママたちと話をしたりもしたけれど
私は人見知りするほうなので、それほど仲良くもなれず
当たり障りのないことや赤ちゃんの話ばかりをしていた。
入院中に義両親がはるばる来てくれて
その夜、夫と義両親・実両親が飲みに行った席で
娘の名前が決まった。
お腹に呼びかけていた名前とは全く違う名前だったので
呼ぶのに妙に緊張したし違和感があった。
入院中に一番困ったのは意外なことにトイレだった。
出産時の会陰切開(実際には裂けた)の痕が
また開いてしまいそうな気がして怖くてできないのだ。
会陰切開の痕はかなり長い間ひどく痛んで
普通にベッドの上に座るのも苦痛だった。
退院後に円座の存在を知り、次回は持参しようと強く心に決めた。
娘はいつも良く寝ていて
私は息をしていないんじゃないかと不安がってばかりいた。
3時間ごとに起きては息をしているのを確認した。
明け方に起きて授乳すると大きな窓から見える景色が
学部生時代に友人の家で徹夜して見た夜明けとダブって
「ああ、もう戻れないんだ」と淋しい気持ちになった。
赤ちゃんのお世話の仕方に自信の持てないまま
入浴やらミルク調製やら一通りのことだけを教えられて
出産から1週間後、退院した。
退院の日、妊娠前の洋服を夫に持ってきてもらったが
お腹の皮(肉?)が戻っていなくて入らず
仕方なくマタニティのワンピースを着た。
初めて娘を抱っこして長い距離を歩いたので
落としてしまうんじゃないかとハラハラした。
夫も娘が壊れてしまいそうで怖かったようで
私が驚くくらいの安全運転で実家に送ってくれた。