分娩室までは、陣痛に耐えながら歩いていった。
それまでは陣痛室までしか通してもらえなかった夫も
ついに分娩室への入室が許されて私の頭のあたりに陣取っていた。
私はと言えば、分娩室へ向かう短い廊下で3回ほど
分娩台へ上る時に1回陣痛が来てしまい、もういっぱいいっぱい。
頼れるのは慣れた看護師さんだけで夫は眼中になかった。
いきんでいいよー、陣痛の波に合わせて
ウ○チする時みたいに力を入れてねー
私の股間の向こうで爽やかに待ち受ける医師と看護師に言われて
いきんでみたら、本当に実が出そうな感覚があって躊躇した。
ホントにウ○チ出そう〜どうしたらいいの〜
と叫んだら、
出してもいいよー
出ちゃう人、結構いるから大丈夫!
と、笑顔の看護師さん。
プロの凄さを頼もしく感じた。
フンー!!!
思い切りいきんだら、ヌモッと股間からデカいものが出て来た。
何とも言い難い、初めての感覚にギャーと驚いて力が抜けた。
どうやら、赤ちゃんの頭が半分出たらしい。
次のいきみで肩まで出て
3回目のいきみでスポーンと体が出た。
ホゲホゲと泣いている赤ちゃんはすぐに洗われ、
私の腹の上にうつぶせに乗せられた。
意外に重い。
それが最初の感想だった。
目の前の赤ちゃんが、ついさっきまで私の腹の中で
ゲシゲシと蹴って暴れていたというのが実感できなくて
「かわいい」とか「無事に生まれて嬉しい」とかより
「あー、終わった〜!スッキリ爽快♪」
という気持ちの方が強かった。
だから、腹の上でモゾモゾとおっぱいを捜している赤ちゃんに対して
何と言葉をかけて良いのかわからなかった。
夫は私の枕元で感動して涙ぐんでいた…らしい。
◆出産ってのは非常事態なので、逸話ができやすいらしい。
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女神たちの伝説(仮)